原価企画

原価企画を見直して利益を獲得

原価企画の考えは、1963年にトヨタ自動車で誕生しました。
1966年に販売が開始されたカローラの開発当時、トヨタ自動車は原価低減目標を決めて製品原価の削減を目指したのです。しかし、当初からこの原価企画が組織活動として十分なものではありませんでした。当初は目標原価を達成できていれば計画どおりに利益が得られるものと考えられていましたが、1973年に起きたオイルショックなどの影響を受けた経験から、それだけでは不十分であることが明らかになりました。そのため目標利益の達成に主眼を置いた原価企画が行われるようになり、現在もそれが引き続き主流となっています。原価企画が利益を向上させたかどうかは、その後のカローラの売れ行きやトヨタ自動車の成長ぶりを見れば明らかでしょう。今では、多くの業界・企業がこの原価企画を用いた商品管理を採用しています。

原価企画には狭義と広義の2種類があります。狭義での原価企画とは、開発や設計をする予定の製品が目標の原価の範囲で開発・製造・販売・廃棄されるようにし、目標を達成させることを示しています。この場合、管理の対象となるのは主に開発設計と製造準備の段階です。
広義での原価企画は、上記に加えて製品の企画から開発、設計、製造、物流、販売、販売後に至るまでの広い範囲を含みます。新製品を開発するときに全サイクルにわたる目標原価と目標利益を設定し、社会活動において全スタッフと協力しながらそれらの目標を達成することを目指すものです。

なぜ原価企画が着目されているのか?

消費者主体で商品価格が決定

かつては企業が製品を作って売り出すと自然に売れる時代でしたが、現在はモノが売れにくい時代となり、”売れるものを作って稼ぐ”時代にシフトチェンジしています。これはインターネットが普及し、多くの消費者が望む情報を自由に得られるようになったことが背景にあります。
何か商品を購入する前に、インターネットで検索すれば適正価格を知ることができ、既に購入した人の口コミやレビューを読めば、品質もある程度分かる時代です。そのため、消費者の判断基準が以前よりも厳しくなっており、企業が一方的に付けた価格が自動的に受け入れられることはなくなっているのです。

開発サイクルの短縮

とある商品がヒットすると、別のブランドがその要素を取り入れて、素早く類似商品を発売することがあります。つまり、新製品を世に送り出してもすぐに注目されなくなるケースがあり、すぐに別の商品の開発に移らなければならないのです。開発にかかる期間を短縮するためには、原価を現場で計算していては間に合いません。原価がどれくらいかかるかを推測し、それに合わせて開発を進めることで、現場の手間を省くことができます。

原価企画の手順

原価企画の具体的な導入について進め方を考えてみましょう。大きく三つの段階に分けて整理します。

①目標原価の計画

目標原価を決めるために、目標売価を設定します。市場価格・類似価格・希望価格のうち、いずれか一つを決めましょう。

  • 市場価格:需要と供給により決まる
  • 類似価格:類似品により決まる
  • 希望価格:得意先の予算・指定により決まる

次に目標利益率から目標利益を計算し、目標原価を出します。
例えば、目標売価を1,000円、目標利益率を70%とする場合を考えた場合、一つの商品当たりの目標利益は700円となり、目標原価は300円と算出できます。

②設計

できるだけ原価を低く抑えた設計を目指し、まずは製品を設計どおりに製作します。
この試作の原価から見積った見積原価を出し、第一段階で計画した目標原価と比較します。

  • 見積原価-目標原価:この差額がコストカットの目標金額となる

設計図を練り直すなど、実際の原価が目標原価に近づくよう工夫を繰り返します。もちろん、自社の努力だけでは原価を安く抑えられないというケースもあるため、その場合は取引先など他社の協力を仰ぐことも検討します。コスト削減を実現させるために、必要な資材を製造しているメーカーと交渉してみてもよいでしょう。ただし、このフェーズに時間をかけすぎてしまうと実際にモノが完成する時期が遅れてしまうため注意が必要です。

③評価

最後に、目標原価達成率とコストダウン達成率を算出して、どの程度の原価低減が実現したのかを評価します。それぞれ、以下の計算式に当てはめて数字を出してみましょう。

目標原価達成率=目標原価/標準原価×100
コストダウン率=(見積原価-標準原価)/見積原価×100
※標準原価にはステップ2の試作の結果で達成された原価を当てはめます。

例)簡単な例として、以下の条件で計算してみましょう。
・見積原価: 1,000円
・目標原価:400円
・標準原価:500円

 目標原価達成率=400/500×100=80%
 コストダウン率=(1,000-500)/1,000×100=50%

目標原価達成率が100%を切る場合、なぜその結果になったのか?問題点を洗い出して今後の対策を考え、次の開発に生かします。

様々な業種に対応できるトヨタ式マネジメントの原価企画

トヨタ式マネジメントの原価企画は、製造業に限らず建築業、IT企業など幅広く応用できるノウハウを持って原価見直しのお手伝いをさせて頂いております。

特に多くお問い合わせいただくIT企業では、ソフトウェア開発会社だけでなく、ハードウェア開発会社、ネットワーク会社、Web制作会社、SIer等々、多くの業態を含んで1つのプロジェクトが成り立っているケースが多く、共通するのは原価における労務費(人件費)の割合が高いという課題が散見されます。

主なIT企業の原価

<労務費>
企業で働く従業員の人件費(エンジニアの開発工数)です。製造業で必須である材料費や金型費等は発生しないため、他業種と比較して、原価における労務費の割合が高くなります。そのため、原価低減には開発工数を適切に管理し、削減することが重要です。

<外注委託費>
動作テストやデバッグ、開発に関わる一部工程を社外のスタッフに委託した際に支払う費用です。こちらも、原価における割合は高くなりやすい傾向にあります。

<経費>
電気代やシステム利用料、PCやサーバー、ソフトウェアなどのIT資産の導入費用、サーバー保守費、事務用品の購入費、打ち合わせなどで発生した飲食代、通信費、従業員の交通費などが含まれます。

このように、IT企業ではプロジェクトごとに原価の内訳が異なっていたり、計算そのものが複雑であったり、原価の大半を労務費が占めることから、そもそもの原価企画・原価計算が難しく、原価低減の実現は簡単ではないため、メンバーの意識改革と同時に、仕様調整やシステム導入などの思い切った行動も必要となるでしょう。
適切な原価企画によって利益率を向上させ、企業の収益改善や健全な経済活動の維持をするためにも、様々な企業で原価低減を実現してきたトヨタ式マネジメントの導入をご検討ください。

貴社のお悩みをまずはお気軽にご相談ください。

トヨタ自動車でTPSの指導経験がある講師陣が、マネジメントの困り事を解決いたします。
ご提案までのコンサルティングは無料で対応いたします

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