自工程完結

理不尽な仕事を無くして業務品質を向上するマネジメント術

トヨタでは、製造現場において「不良品は造らない、次の工程に流さない」という考え方が存在しています。つまり各工程の担当者が責任をもって業務を進め、品質を保証するということで、最終検品に頼らなくとも高い品質を保てる仕組みを構築しています。
それを「自工程完結」と言います。英語では「Zone control」と呼ばれることもありますが、「Ji Kotei-Kanketsu」の頭文字をとって『JKK』とも言います。

自工程完結もまた製造現場だけのものではなく、日本メーカーの課題であるホワイトカラーの生産性向上にも大いに役立つとされています。

自工程完結の特徴

  • 目的から業務工程を逆算することで、誰でも安定した品質でアウトプットを行える
  • 担当者の属人的な能力による差を無くすことができる
  • 求められた品質を満たしているかを担当者自身が把握するため、業務の早い意思決定を行うことができる

自工程完結が行われていないと・・・

「自工程完結」の考え方で仕事を進めることは、自分の仕事のやり方や、組織の仕事のやり方をゼロベースで見直すことと同じです。前工程の成果を受け取り、責任をもって成果を挙げ、後工程に渡すように運用することは、1つ1つの工程の意思決定の精度を高めることができるので、業務品質や生産性の向上に繋がり、組織としての大きな成果を生むことになります。
重要なのは、個人の部分的な仕事ではなく、全体を見て仕事をしてくことです。
自工程完結が正しく行われていない場合は、以下のように次の工程へ上手にバトンが渡らないので後々に控える仕事に支障をきたします。

自工程完結のフロー

1.目的・ゴールの明確化

例えば資料作成であれば、その資料は何のために作られるのか?何が「目的・ゴール」なのか?を明確化します。上司が指示を出す時に依頼した業務の「目的」と最終的な「ゴール」は何かを明確に伝えることで部下はそれを理解し、アウトプットへの認識のズレを防げます。意義のある業務を行った達成感は、部下自身のモチベーション向上にもつながります。

2.プロセスの明確化

当たり前ですが最終的なアウトプットイメージが、仕事の依頼者と作業者との間で共有できていないと、想定したものとは異なるものが出来上がります。また部下のスキルによってもギャップは生まれるものです。そこで大切なのは、業務を行う前に大まかに作業順序を洗い出し、必要な情報が出揃い業務のアウトラインが決まった段階で直属の上司に確認を取ります。そうすることで、自分がどのようなプロセスで具体的にこれから何を行っていくのか理解できるため、円滑に作業が進み生産性も上がっていきます。また、上司もプロセスを把握していることで、仮に途中で問題が起きても、どの部分でミスをしたのかが一目瞭然で分かるため、フォローがしやすくなります。

3.判断基準、良品基準の明確化

仕事のアウトプッドが正しいものになるかどうかを大きく左右するのが、プロセスの1つ1つが確実に正しく実行されているかどうかという点と、「〇〇な状態になったら次のプロセスへ進もう」というような「判断基準」が求められます。
ただし、判断が属人化してしまうと最終的なアウトプットに差が生じることになるため、上司はどの段階なら次のプロセスに進んで良いのか、部下自身が判断できる基準を設けることが大切です。
そうすることで、漏れや不必要な作業が無くなり、品質向上も図ることができます。

4.達成のための必要条件を定める

判断基準の精度を更に高めるために行うのが、プロセス達成のための必要条件を設定することです。トヨタでは正しい結果を導き出すために必要なものを「良品条件」と呼び、製造プロセスごとに必要な条件を定めています。
プロセス毎に用いるツールや関係する人材、メンバーのスキル、注意点などをリストアップし、正しい結果を導き出すための達成条件(必要なもの)を設定することで最終的なアウトプットの品質向上が期待できます。

5.振り返りとフィードバック

アウトプットが完了したら、「振り返り」と「フィードバック」を行います。自分が行った仕事の結果が良かったか、良くなかったかを振り返り、良くなかった場合にはどこに問題があったのかを確認して修正していきます。それらは全て明文化して記録していくことが大切です。
また、自分だけが把握しておくのではなく、メンバーにも共有を行うことで、後任に円滑に引き継ぐことができたり、他の業務にも応用することができます。

トヨタ式マネジメントの自工程完結で期待できること

このように自工程完結は、目的(ゴール)と最終的なアウトプットを明確にし、プロセスを洗い出した後、プロセスごとに判断基準(良品基準)と達成条件(必要なもの)を明確にしていきます。各プロセスでは自分の仕事に対して「本当にこれでいいのか?」などという迷いはなく、自信を持って仕事を進めてアウトプットにつなげていくことができます。
そうすることで、このような効果を生み、強い組織へと成長していくのです。

  • 上司が進捗確認するタイミングを作りやすい
  • 組織の上下左右でコミュニケーションが深まる
  • 各部署の得意分野を最大限に生かせる
  • 部門内の情報共有が円滑に進みやすい
  • やらされ感や妥協の仕事がなくなる
  • スピード・生産性が上がる
  • 無駄な会議が減る
  • 作業ミスや手戻りが減る

これが、トヨタ式マネジメントの新しい仕事の進め方です。

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